アメリカ最高裁判所の判事の1人であったルース・ギンズバーグさんが2020年9月18日金曜日に癌闘病の末亡くなりました。87歳でした
亡くなる数日前、孫娘で弁護士のクララ・スペラに遺した言葉があります
My most fervent wish is that I will not be replaced until a new president is installed.
Ruth Bader Ginsburg
私の最も熱心な願いは、新しい大統領が就任するまで私の後継が決められない事です。
ルース・ギンズバーグ判事ってだれ?
93年にクリントン大統領の推薦で最高裁判事として就任したルース・ベイダー・ギンズバーグ判事(以下RBG)はアメリカ史に残るリベラル派のアイコンとして非常に人気のある人物です
コーネル大学をクラストップで卒業し、ハーバード大学のロースクールに進みましたがある日教授になぜ女子生徒は今そこに座っているのか、その分男性の入学を阻むのかと言われた事があるそうです。その後コロンビア大学に編入、卒業しています
成績上位で卒業してもなかなか仕事が決まらず、自身だけでなく全ての女性のためにその影にある性差別と亡くなるまでずっと闘ってきた、フェミニストのパイオニア
女性だけでなく、LGBTQ+やシングルファーザー、移民などマイノリティーに、まだ女性が男性なしには銀行口座を開けないような時代からずっと寄り添って辛抱強く、静かにでも鋭く保守派の説得に努めてきた人
DACA廃止案の却下、LGBTQである事を理由にクビに出来るという法案の却下など最近でも最高裁はマイノリティーの最後の拠り所となっていました
2015年には本が、2018年にはドキュメンタリーが出され“Notorious RBG(悪名高きRBG)”として知られ大人気となりました
他にファースト、ミドル、ラストネームの3つのイニシャルで呼ばれる著名人にはMLK(マーティン・ルーサー・キングJr.)やJFK(ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ)、最近ではAOC(アレクサンドリア・オカシオ・コルテス)などがいます(※AOCについては別に記事を書きたいと思っています)
このドキュメンタリー、ぜひ観てほしい
幼い子供を育てながら癌の夫の看病をし、家族を養っていた時期があるそうです
朝の4−5時まで仕事をし9時には法廷に立ち、晩年大腸癌・膵臓癌を患っても化学療法は金曜日にして月曜からの仕事を休む事はなかったNotorious RBG!
癌を克服し筋肉をつけるためパーソナルトレーナーをつけてワークアウトまで!
私自身、骨髄移植前の前処置で化学療法を経験しているので
副作用がどんなものかわかります
年齢を考えても、副作用を考えても彼女の意思の強さに頭が上がりません
彼女は最期までファイターでした
そして何より彼女と夫マーティーの関係が素敵
あんな夫婦が理想ですね
これからどうなるの?
まず、アメリカの最高裁判事という職業は任期がなく1度就任すると本人が亡くなるか、辞任するか、よっぽどの理由でクビになるかしなければ次の人には変わりません
基本的には終身制です
歴史を振り返ると最高裁判事の数が7-12人の間で変動があったそうですが、現在は9人でうち5人が保守派です
通常であれば空席が出た時に大統領が次の候補を推薦し上院がそれを承認しますが、今回は大統領選まであと45日という時期でもあり、またオバマ大統領時代に選挙まで8ヶ月もあったにもかかわらず共和党が阻止したという過去もあり大揉めに揉めていますがワシントン紙によれば過半数のアメリカ国民が選挙後に新たに決まった大統領が指名すべき、と回答しています
なぜ選挙後まで待ちたいかと言えば、現在の判事はリベラル4:保守5ですがトランプ大統領が新たに人を推薦すれば3:6となりバランスが崩れ最高裁の判断にも影響を及ぼすことが十分に予想されるためで、冒頭に載せた彼女の最期の願いもそこに起因しています
また上院は共和党優勢で現在は全100議席のうち共和党53席・民主党45席・インディペンデントが2席なので、承認を阻止するためには民主党全員とインディペンデント両名、そして共和党から4人反対者を出さなければなりません
これがもし共和党3人だった場合、同票になってしまい副大統領のペンスが最後の1票を投じる事になるのでその場合は高確率で新判事が承認されてしまう事になります
次の候補は?
トランプ大統領はすぐにでも次の候補を決定すると発言していて候補者のショートリストもわかっており、女性を推薦する、とは言っているものの現在有力視されているエイミー・コニー・バレットはやはり保守派で敬虔なカトリック、中絶の権利にも反対の姿勢で知られるRBGとは正反対の候補で自身も7人の子供を持ち、夫と子ども達と共に“People of Praise” という怪しい団体に属している人物です…
団体は自身を“カリスマティック・クリスチャン・コミュニティ“としており、お互いに”covenant “という生涯の誓いを立て男性には“ヘッド“女性には“ハンドメイド“というパーソナルアドバイザーがいて、夫達は妻達の“ヘッド“であり家族の事について決定権があると教えているそうです
さらに“ヘッド“や“ハンドメイド“達が人生の中の大切なこと、例えば誰とデートすべきか、誰と結婚すべきか、家を買うべきか、どこに住むべきか、その仕事を受けるべきか、子どもをどのように育てるべきかなどについて決める時に方向性を決めるのだそう(Souce: NBC News)
エイミー・バレットはRoe v. Wade(また別記事書くかも)やオバマケアにも批判的です
LGBTQ+にとっても彼女の就任の可能性は脅威となります。2年前に26以上ものLGBTQ+団体、そして弁護士団体(Lambda Legal, the National Center for Lesbian Rights, Trans Law Center, GLSEN, PFLAG National, etc.)がすでに彼女の候補になる可能性について反対を表明しています(Souce: New York Times)
私たち日本人にはわかりにくい感覚ですが、アメリカ国内の様々な問題には宗教が深く関わっています。例えば熱心なキリスト教の学校ではダーウィンの進化論などは一切教えずアダムとイブの説を事実とし、そして心から信じている。LGBTQの矯正施設なども未だにあります。そこから根本的に違うので相手の価値観を変えるのは本当に困難です
判事の任命、そして11月の大統領選は今後のアメリカの方向性を大きく変えることになり、それは当然日本にも影響を及ぼします
今後も注意深くみていきましょう
REST IN POWER, RBG!!